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2002.05.20 (月)

「 微塵の妥協も許されない国家主権侵害事件への対処 」

『週刊ダイヤモンド』 2002年5月25日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 446回

5月9日夜のニュース番組でいっせいに報じられた映像の、なんとすさまじかったことか。中国遼寧省瀋陽の日本総領事館で発生した、北朝鮮国民の亡命事件である。

5人の北朝鮮亡命者は、日本領事館内に、確かに逃げ込んでいた。その彼らを追って、中国の官憲が日本領事館内に走り込み、幼児をおぶった女性ともう1人の女性を押し戻し、馬乗りに押さえ込んでいる様子が鮮明に映っている。一方、男性2人は領事館本館1階の査証申請者待合室にまで逃げ込んだが、中国の武装警官5~6人が待合室にまで侵入し、2人を連行した。

その間、日本総領事館の職員たちが傍観する姿が、映像に映し出されていた。地面に転がされて押さえ込まれている女性2人と幼児を見ても、中国の官憲に抗議する様子もない。

後に中国は5人の連行は領事館側の了解を得たと主張、日本側は全面否定した。が、ひょっとして中国の主張が正しいのではないかと、日本国民でさえ疑ってしまうような状況がある。だが、もし、本当にそうでないなら、日本政府は非常に厳しく対応すべきだ。

日本を誹謗する嘘は許されず、また中国官憲の領事館内への踏み込みは、明らかに日本の主権の侵害である。

こんな事態が目前で進行するのを許したのが、日本だ。こんな事態を平然と起こすのが中国だ。なんと無様(ぶざま)な日本の官僚の姿か。なんと野蛮な中国官憲の姿か。国家を代表して任地にあるという認識を欠落させた日本の官僚の姿も、国際法も人権も踏みにじる中国側の姿も、考えるだに胸が悪くなる。

先例のないひどい事態の発生を許してしまった今、これから日本はどうすべきかである。小泉首相は当初、事態の把握が不十分で、慎重に事態を見つめるなどとコメントしていたが、外交案件は、その種の対応がふさわしい場合と、絶対に妥協したり譲ったりしてはならない案件の2種類に分かれる。

国家の主権がかかわってくる場合が後者のケースである。今回の事件はまさに後者、日本の国家主権が侵害されたケースである。このような場合、日本が取るべき措置は断固たるものでなければならない。いっさいの妥協、譲歩はもとより、外務省がたびたび見せる、相手へのへつらいの片鱗も許されない。日本は5人の亡命者について、明確に時間を区切って中国政府の返答を求めるべきだ。灰色の返答ではなく、YesかNoの明確な返答、5人の身柄を日本政府に引き渡すか否かの明確な返答を求めていくべきだ。

中国側が交渉戦術として、他の問題とこの問題を絡ませてくることは容易に想像がつくが、日本はそんな交渉に応じてはならない。仮にもこの問題を、奄美大島沖合の工作船引揚げ問題や首相の靖国参拝問題などに絡ませることがあってはならないのだ。

そして万一、中国政府が5人の身柄を引き渡さないような事態になれば、日本は、主権が犯されたこと、そのうえ、主権侵害も認めず適切な対処もしない中国に対して、毅然とした姿勢を明らかにすべきだ。たとえば、ODAの見直しである。日本の主権を無視する国に対して、国民の税を援助金として低利で貸し出したり、無償供与することはおかしいのである。

日本政府はここまでの事態を心に決意して、全力で中国に抗議し、日本が本気であることを伝え続けるべきだ。

そして、もういい加減に難民および亡命者に対する政策を根本から見直すことだ。難民にも亡命者にも、日本政府は手をさしのべてこなかった。そんな日本に、人道愛や人権を語る資格はない。経済的に大国になっても、その心は恥ずかしいばかりに貧しく、臆病で卑屈である。こんな国の姿から脱却するためのきっかけとして、この事件を生かすべきだ。

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「 微塵の妥協も許されない国家主権侵害事件への対処 」

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